車内の快適さを維持するために欠かせないのがエアコンです。特にクーラー機能の故障は高額な修理費用がかかり、診断が難しい問題です。エアコンの故障を診断するためには、その動作原理を正しく理解することが非常に重要です。
エアコンの内部構造を正確に理解することで、故障の兆候から問題箇所を推測し、修理箇所を迅速に特定できるようになります。自動車のクーラーシステムは、家庭用のエアコンと似た構造を持っています。
最新の自動車では、電子技術の進歩により、コンピューターを使用した診断が可能で、正確なチャートに従えば故障箇所を特定できます。ただし、故障箇所を論理的に判断する能力も同様に必要です。
以下では、エアコンの仕組みについて詳しく説明します。
エアコンの主要な構成要素
自動車のエアコンシステムは、いくつかの主要な部分から成り立っています。まず、気化した冷媒を圧縮して液体に戻す「コンプレッサー」があり、その後、圧縮された高温の液体冷媒を冷却する「コンデンサー」、冷媒内の不純物や水分を取り除き、気体と液体の冷媒を分ける「レシーバー」、車内で冷媒を気化させ、空気を冷却する「エバポレーター」、エバポレーター内に液体冷媒を噴射して気化させる「エキスパンションバルブ」、エンジンの冷却水の温度を利用して空気を温める「ヒーターコア」、そして冷えた空気と温かい空気を混ぜて適温に調整する「エアミックスバルブ」、さらに送風を担当する「ブロアーモーター」が含まれています。
エアコンのクーリングサイクルは次のようになります:「コンプレッサー」⇒「コンデンサー」⇒「レシーバー」⇒「エバポレーター(エキスパンションバルブ)」⇒「コンプレッサー」へ戻る、というサイクルです。
また、コンデンサーはラジエターと共用しており、クーリングファンが装備されています。このファンは、車が停車中でもクーラーが効果的に作動するように送風する役割を果たしています。
クーラーとヒーターの温度調整!エアミックスバルブの機能
クーラーが冷たい風を出せる理由は、冷媒が気化する際に周囲から大量の熱を吸収することにあります。このプロセスによって、エバポレーターの温度が非常に低くなります。
吸収された熱は、コンプレッサーによって気化した冷媒を圧縮して液体に戻す際に、圧縮熱として冷媒の液温を上昇させます。上昇した液温は、コンデンサーを介して外部に放出され、この過程によって車内の熱を外部に排出しています。
ヒーターはエンジンの冷却システムと連動しています。エンジンは燃料を燃焼させて動力を発生させており、その過程で高温になります。
エンジンが過度に熱くなるのを防ぐために、冷却水がエンジンを冷却します。同時に、この冷却水は車内のヒーターコアにも供給され、ヒーターコアの温度を上昇させ、車内の空気を温めます。
クーラーで冷却された冷たい風と、ヒーターで温められた風は、エアミックスモーターを通じて混合し、快適な温度に調整されて送風され、車内の温度を調整しています。
クーラーシステムの主要コンポーネント
コンプレッサーは、クーラー機能の中心的な部品で、エンジンからの動力を伝えるためにベルトとプーリーで連動しています。プーリーとコンプレッサーの間にはマグネットクラッチが設けられており、エバポレーターが過度に冷えて凍結することを防ぐために、クラッチが切断される仕組みです。このマグネットクラッチは電磁マグネットを使用し、大きな電流を必要とするため、専用のリレーで制御されています。
コンデンサーは通常、ラジエーターと同じ位置に配置されています。ラジエーターには冷却用のクーリングファンが2つ装備されており、コンプレッサーのマグネットクラッチが作動中は、水温に関係なくクーリングファンが回転するようになっています。
最近の自動車では、レシーバーが通常コンデンサーと一体化されており、視覚的には見えない場所に配置されています。レシーバーは冷媒内の不純物を取り除き、エキスパンションバルブが詰まるのを防ぐために冷媒を浄化し、液体と気体の冷媒を効率的に分離して気化熱を最大限に奪う役割を果たします。
エバポレーターは、高圧で噴射された冷媒が気化して冷却される部分で、エキスパンションバルブから供給された高圧冷媒が急激に気化し、冷たくなります。
エバポレーターは、小さなラジエーターのような形状をしており、通過する送風によって冷却されます。湿度の高い状況下では結露が発生し、結露水が排水されます。夏季にクーラーを使用し続けると、エバポレーターからの結露水が排出されることがあります。
この結露が凍結すると、冷却効率が低下し、損傷の危険があるため、エバポレーターの温度が低くなりすぎるとコンプレッサーのマグネットクラッチが切断されます
クーラーのトラブルシューティング!故障の原因
クーラーが適切に機能しない場合の診断は、いくつかの要因に注意を払う必要があります。以下は一般的な診断手順です。
冷媒ガスの不足:クーラーが朝晩などの涼しい時間には動作するが、暑い昼間には効果がない場合、冷媒ガスの不足が考えられます。冷媒ガスの量が不足していると、冷却効果が低下します。冷媒ガスの充填が必要かもしれません。
クーリングファンの動作確認:クーラーが走行中には機能するが、停車中や渋滞時には冷えない場合、クーリングファンが正しく動いていない可能性があります。クーリングファンがエアコンコンデンサーを適切に冷却しなければ、効果が低下します。
クーラーガス漏れの確認:クーラーが一切効かない場合、冷媒ガスの不足やクーラーガスの漏れが疑われます。クーラーガス漏れの場合、まずクーラーガスを充填してクーラーの動作を確認し、もし冷えるようであれば、ガス漏れ箇所を特定するために診断器具を使用します。
電気系統の確認:クーラーが常に効かない場合、電気系統の問題やマグネットクラッチのリレーの故障が考えられます。まず、マグネットクラッチのリレーが正常に動作しているかを確認します。電力がマグネットクラッチに届いている場合、クラッチが作動しない場合は、クラッチ自体の故障が考えられます。
マグネットクラッチリレーのスイッチコイル側に電気が来ていない場合、エアコンユニットの故障が考えられます。
これらの一般的な診断手順を実行し、問題を特定して修理または交換の措置を取ることが重要です。クーラーの正常な動作は、快適な運転に欠かせない要素です。
まとめ
クーラーは構造さえ理解していれば、診断は難しくない機構です。
車に組付けられている状態では部分ごとに分けて判断しがちなのですが、動く仕組みを順を追ってみていけば故障個所は見つけやすいです。