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※2026年10月28日時点で確認した公表資料と、筆者の整備・検査・工場管理の実務経験をもとにしています。
「整備士は残業が多い仕事なのか」
「繁忙期になると、毎日帰るのが遅くなる」
「人が足りないのに、入庫台数は減らない」
こうした状況が続くと、今の職場で働き続けてよいのか迷うことがあります。
結論からいうと、整備士の残業は、勤務先や店舗、時期によって異なります。整備士だから必ず残業が多いとは限りません。
私はディーラーで整備士、検査員、工場管理などを経験してきました。
現場で感じてきたのは、残業の原因を整備士本人の作業スピードだけでは説明できないということです。
入庫台数、追加整備、故障診断、人員配置。こうした条件によって、その日に終えられる仕事量は変わります。
今の働き方を考えるときは、次の3つを確認することが大切です。
- 実際に何時間働いているか
- なぜ残業が発生しているか
- 会社が原因を改善しようとしているか
この記事では、公的資料と私の現場経験を分けながら、残業が発生する背景と、職場を変えるか考える判断基準を整理します。
整備士の残業は「月平均」だけでは判断できない
同じ整備士でも、働く条件は一律ではありません。
整備士の人数、担当する車種や作業、管理するお客様の数、予約の組み方などによって、残業の発生状況は変わります。
私が見てきた中でも、同じ会社だから、どの店舗も同じ時間に仕事が終わるというわけではありませんでした。
求人の平均残業時間は、対象と期間を確認する
求人に「残業月平均○時間」と書かれていても、それだけでは配属後の働き方までは分かりません。
| 確認すること | 見落としやすい点 |
|---|---|
| 対象の職種 | 会社全体の平均と整備部門の平均が異なる場合がある |
| 対象の店舗 | 配属予定の工場とは状況が違う場合がある |
| 集計期間 | 年間平均では繁忙期の長時間労働が見えにくい |
| 時間の意味 | 総労働時間と残業時間は別の数字 |
公表資料でも同じです。月の「労働時間」として掲載された数字を、そのまま残業時間として扱うことはできません。
数字を見るときは、何を集計したものなのかまで確認する必要があります。
通常期と繁忙期を分けて聞く
車検が集中する時期や、地域によっては季節のタイヤ交換が増える時期など、整備工場の仕事量は変動します。
求人や面接では、平均時間に加えて、
「繁忙期は月何時間程度になり、その状態が何か月続きますか」
と聞くと、生活への影響を考えやすくなります。
繁忙期だけ残業が増える職場でも、負担が小さいとは限りません。時間数と、その状態が続く期間を合わせて見ることが大切です。
3月などの繁忙期は車検や入庫が集中しやすい
私が働いてきたディーラーでは、特に3月と9月は忙しくなりやすい時期でした。
決算に伴う販売や納車の予定に、車検・点検などが重なるためです。ただし、9月については全国一律の傾向ではなく、私が経験した職場での話です。
3月の車検集中については、国土交通省も平準化に向けた対策を進めています。
2025年4月からは、車検証の残っている有効期間を失わずに継続検査を受けられる期間が、満了日の1か月前から2か月前へ拡大されました。
出典:国土交通省「車検を有効期間満了日の2か月前から受けられるのは令和7年4月1日からです」
これは、2か月前より早く車検を受けられないという意味ではありません。残りの有効期間を失わずに受けられる期間の変更です。
早めに案内して予約を分散できれば、特定の時期への集中を和らげる余地があります。
ただし、制度が変わっただけで残業が減るわけではありません。実際に入庫を分散する運用につながっているかが重要です。
残業が増える原因は、入庫台数と作業時間のずれにもある
私の経験では、残業が増える大きな原因の一つは、その日に終える予定の仕事量が、現場で対応できる量を超えていることでした。
台数が同じでも、点検中心の日と、故障診断や重整備が重なる日では必要な時間が違います。
入庫台数だけで予定を組むと、実際の作業との間にずれが生じます。
追加整備が出ても、次の予約車は入ってくる
1時間で終わる予定だった車でも、点検中に追加整備が見つかることがあります。
異音の再現確認や、故障原因を絞り込むための診断に時間がかかる場合もあります。
その間も次の予約車は入ってきます。
遅れが重なると、予定表では定時に終わるはずだった仕事が残り、最後に残業で処理することになります。
この状態で「もっと早く作業しよう」と求めるだけでは、解決しない場合があります。
確認したいのは、追加作業が出たときに、納期・担当・入庫予定を調整できるかです。
OBD検査やエーミングも予定時間へ反映する
現在の車では、車種や作業内容によって、診断機による確認や、カメラ・レーダーの調整であるエーミングが必要になる場合があります。
また、対象車の車検では、国産車は2024年10月、輸入車は2025年10月からOBD検査が始まっています。
OBD検査は、車載式故障診断装置を活用して電子制御装置の状態を確認する検査です。すべての車が対象ではありません。
出典:国土交通省「自動車の電子的な検査(OBD検査)について」
こうした検査や調整そのものが、必ず残業につながるわけではありません。
必要な作業を予定時間に織り込まず、従来と同じ感覚で予約を受ければ、現場の負担が増える可能性があります。
作業内容の変化に合わせて予約枠を見直しているかも、職場を判断するポイントです。
人員・設備・教育体制によっても残業は変わる
人手不足は現場の負担につながります。ただし、人数を増やせば、それだけで解消するとは限りません。
整備士ごとの経験や担当できる作業、使用できる設備によって、対応できる仕事量は変わります。
新人の教育時間も仕事量に含める
新人や未経験者には、説明や作業確認が必要です。
先輩整備士が手を止めて教える時間を見込まず、新人をすぐに一人分の戦力として予定に入れると、指導する側の負担が増えることがあります。
私が見てきた現場でも、採用と教育はセットで考える必要がありました。
採用人数だけでなく、教育担当者の予約台数や担当作業も調整しているかを見ることが大切です。
設備があるだけでなく、使える状態かを確認する
診断機、重量物を扱う補助設備、作業支援機器、予約・工程管理のシステムなどは、負担を減らす手段になります。
ただし、設備があるだけでは十分ではありません。
必要なときに使えるか、使い方を学ぶ時間があるか、実際の作業に合っているかまで関係します。
会社の規模や設備一覧だけで判断せず、日々の仕事にどう活用しているかを見ると、現場の状況をつかみやすくなります。
残業時間の上限と、記録・残業代を確認する
私が整備士として現場で働いていた約30年前には、月90~100時間ほど残業することもありました。
これは当時の私の経験であり、現在の整備士全体の働き方を示すものではありません。
現在は時間外労働の上限規制があります。ただし、上限があることと、現場の仕事量に余裕があることは別です。
原則は月45時間・年360時間
一般的な労働時間制度における法定時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。
臨時的な特別の事情があり、適法な特別条項付き36協定がある場合でも、次の制限があります。
| 上限 | 対象 |
|---|---|
| 原則月45時間・年360時間 | 法定時間外労働 |
| 特別条項でも年720時間以内 | 法定時間外労働 |
| 単月100時間未満 | 法定時間外労働と法定休日労働の合計 |
| 2~6か月の各平均80時間以内 | 法定時間外労働と法定休日労働の合計 |
| 月45時間を超えられる回数 | 年6か月以内 |
会社の終業時刻を過ぎた時間と、法律上の「法定時間外労働」は、必ず同じ範囲になるわけではありません。勤務制度や、法定労働時間を超えているかを分けて確認する必要があります。
また、**上限以内なら身体への負担が小さい、という意味ではありません。**疲労や家庭生活への影響も含めて考えることが大切です。
記録上の残業だけ減っていないか
仕事量が変わらないまま「残業を減らすように」と言われても、記録に残らない労働が増えているなら問題です。
退勤の記録と、実際に仕事を終えた時間が一致しているか。会社の指示などで行う業務が記録から外れていないかを確認します。
実際に働いた時間が適切に記録されず、賃金も支払われていない場合は、単に繁忙期で忙しいこととは分けて考える必要があります。
残業を減らした後の収入も比較する
残業代が毎月の収入の一部になっていると、残業が減った後の手取りも気になります。
他社と比較するときは、年収の総額だけでなく、次の内訳を確認します。
- 基本給
- 資格手当・役職手当
- 残業代の計算方法
- 固定残業代の金額と対応する時間数
- 固定残業時間を超えた分の支給方法
固定残業代があっても、対象となる時間を超えた分などの割増賃金は、別途支払う必要があります。
残業をしなくても必要な収入を確保できるか、仕事量と労働時間が釣り合っているかを合わせて考えることが重要です。
給与と休日を含めた待遇の比較は、こちらで整理しています。
▶ ディーラー整備士の年収はいくら?給料・年間休日の最新求人と待遇を上げる方法
残業が多い職場を続けるか考える5つの判断基準
今の職場を考えるときは、残業時間だけでも、原因だけでも十分ではありません。
次の5つを合わせて確認すると、状況を整理しやすくなります。
| 判断基準 | 確認したいこと |
|---|---|
| ① 実際の労働時間 | 記録と勤務実態が一致しているか |
| ② 残業の継続性 | 繁忙期だけか、一年中続いているか |
| ③ 入庫計画 | 人数・技量・作業内容に合う仕事量になっているか |
| ④ 改善の実行 | 予約調整、採用、教育、設備導入などが進んでいるか |
| ⑤ 生活への影響 | 疲労、身体の痛み、家族との時間に支障が出ていないか |
安全確認まで急がされていないか
私が残業の問題で気になるのは、帰宅時間だけではありません。
時間に追われ、確認作業まで急がされることです。
無理な予定で作業が遅れ、焦りから確認不足や手戻りが起きれば、さらに仕事が増える可能性があります。
ミスが起きたときに本人の注意力だけを問題にせず、作業時間、担当の割り振り、確認体制まで見直しているかが重要です。
整備品質と安全を守るための時間を確保できているかも、職場を判断する基準になります。
相談後は、仕事の組み方が変わるかを見る
改善を相談するときは、何が原因で遅れているのかを具体的に整理すると話を進めやすくなります。
たとえば、追加整備が出ても予定を変更できない、教育担当者の仕事量が減らない、特定の作業が一人に集中している、といった状況です。
その後は「改善する」という説明だけでなく、入庫や担当の配分が実際に変わるかを見ます。
改善が進まず、身体や家庭生活への影響も続いている場合は、別の職場と比較する理由になります。
休日や有給休暇も取りにくい場合は、残業と合わせて確認したいところです。
▶ 整備士は休みが少ない?年間休日・土日休みの実態と職場を変える判断基準
腰痛などで現場作業そのものがつらい場合は、担当作業や身体への負担も見直す必要があります。
▶ 整備士の腰痛が限界…続けるべき?転職すべき?後悔しない判断基準
他社を見るなら、残業時間と仕事の組み方を確認する
今の会社だけを見ていると、他にどんな働き方があるのか分かりにくいものです。
他社の求人を比較するときは、残業時間に加えて、その時間内で仕事を終えられる体制になっているかも確認します。
| 確認項目 | 面接などで聞いておきたいこと |
|---|---|
| 平均残業時間 | 整備部門・配属予定店舗の実績か |
| 繁忙期 | 時間数と、その状態が続く期間 |
| 人員配置 | 整備士の人数と、担当作業の分担 |
| 入庫管理 | 追加整備や突発修理が出た場合の調整方法 |
| 教育体制 | 指導する人の仕事量をどう調整しているか |
| 勤怠管理 | 労働時間の記録方法と申請・承認の流れ |
| 給与・休日 | 基本給、残業代、休日出勤、有給の取得状況 |
面接では、
「配属予定の工場では、通常期と3月などの繁忙期で、残業時間はどの程度変わりますか」
と聞くと、働き方を具体的に確認しやすくなります。
整備士を辞めたいのか、今の会社を変えたいのか
整備の仕事は好きで、残業が減れば続けたい。その場合は、別の会社で整備士を続ける選択肢があります。
一方、残業以外にも仕事内容や身体への負担に悩みがあり、仕事そのものを変えたいなら、別の職種も含めて考える段階です。
今の会社への不満と、整備士という仕事への気持ちは分けて考えることが大切です。
「今の会社で続ける」「別の会社で整備士を続ける」「別の仕事へ移る」で迷っている方は、次の記事で判断基準を整理しています。
▶ 自動車整備士から転職するべき?続ける人・辞める人の判断基準
相談先も自分の条件に合うか確認する
転職相談を利用する場合は、整備士として職場を変えたいのか、異業種へ移りたいのかを伝えます。
サービスごとに得意な職種や地域、対象層が異なり、希望する求人を必ず紹介してもらえるわけではありません。
次の記事では、まだ転職を決めていない段階での相談の考え方と、各サービスの違いを整理しています。若年層向けのサービスも含むため、自分の年齢・地域・希望職種に合うかを確認したうえで検討するといいでしょう。
▶ 整備士を辞めたい人向け転職エージェント3選|まだ転職を決めていなくても使える相談先
比較した結果、今の会社で続けると決めても構いません。他社の条件を知ることは、今の会社に相談したい内容を整理する材料にもなります。
よくある質問
整備士の残業は月何時間くらいですか?
勤務先や店舗、時期によって異なるため、一律には言えません。
求人の数字は、会社全体か整備部門か、年間平均か繁忙期かを確認します。配属予定の職場について、通常期と繁忙期の両方を聞くと実態をつかみやすくなります。
ディーラー整備士は残業が多いですか?
ディーラーでも会社や店舗によって違います。
入庫の集中に加え、人員配置、整備士の経験、設備、工程管理などが関係します。ディーラーという理由だけで判断せず、実際の時間と仕事の組み方を見ることが大切です。
繁忙期なら月45時間を超えても問題ありませんか?
繁忙期であることだけで、原則の上限を超えられるわけではありません。
法定時間外労働が月45時間を超える場合は、臨時的な特別の事情や、適法な特別条項付き36協定などの確認が必要です。特別条項があっても、時間数や回数には上限があります。
月何時間残業したら転職を考えるべきですか?
「月○時間なら必ず転職」とは一律に決められません。
実際の労働時間、長時間労働が続く期間、身体や家庭生活への影響、会社の改善状況を合わせて考えます。
つらさを感じている場合は、特定の時間数になるまで待つ必要はありません。
まとめ|残業時間・原因・改善の見込みを合わせて判断する
整備士の残業は、勤務先や店舗、時期によって変わります。
私が見てきた現場では、入庫台数だけでなく、追加整備や故障診断、人員配置、教育、工程管理などが仕事の終わる時間に影響していました。
確認したいのは、次の3点です。
- 実際に何時間働いているか
- その残業が、どのような原因で発生しているか
- 会社が原因を改善し、負担を減らしているか
理由が分かっていても、長時間働く負担がなくなるわけではありません。労働時間の記録と残業代、安全確認、身体や家族への影響も含めて考える必要があります。
今の会社で改善が難しい場合も、整備士を辞める以外に、勤務先や担当業務を変える選択肢があります。
残業が減れば整備士を続けたいのか。それとも、仕事そのものを変えたいのか。
迷っている方は、次の記事で自分の状況と選択肢を照らし合わせてみてください。
▶ 自動車整備士から転職するべき?続ける人・辞める人の判断基準
参考資料



