
ディーラーの利益は、車両本体だけでは決まりません。新車と中古車では利益構造が異なり、保険・ローン・用品・点検整備も収益になります。また、営業の歩合やインセンティブは、販売会社や役職によって変わります。
私が自動車営業として働いた経験では、新車の値引き前の車両粗利益は、軽自動車やコンパクトカーで20万〜30万円程度、ミドルクラスのミニバンで40万〜60万円程度、高級セダンや高級ミニバンでは100万円前後になるケースがありました。
中古車では、仕入れ価格と販売価格の差を基準に、20万〜30万円程度の粗利益を見込むケースがひとつの目安でした。
ただし、これは業界全体で共通する固定相場ではありません。実際の粗利益は、メーカー、車種、値引き額、仕入れ条件、販売会社の規模によって変わります。
この記事では、車1台の利益構造と、営業本人に付く販売奨励給・インセンティブの仕組みを、現場経験をもとに解説します。
車1台を売るとディーラーはいくら儲かる?
この記事でいう「車1台の利益」は、主に販売価格から仕入れ価格や値引きを差し引いた車両粗利益を指します。
人件費や店舗経費まで差し引いた、販売会社の最終利益とは異なります。
車両粗利益が出ても、そこから人件費、店舗維持費、広告費などがかかります。
売価全額が利益になるわけではない
車両販売の粗利益には、主に次の要素が影響します。
- 車両の仕入れ価格
- 車両本体の値引き
- 用品サービス
- 下取り価格の上乗せ
さらに、販売会社には次のような経費がかかります。
- 営業スタッフや整備スタッフの人件費
- 店舗や展示場の維持費
- 広告費
- 展示車や試乗車の管理費用
そのため、車両販売で粗利益が出ても、その金額がすべて販売会社の最終利益として残るわけではありません。
値引きをすれば粗利益は減る
商談では、車両本体の値引きだけでなく、用品サービスや下取り価格の上乗せが行われることがあります。
例えば、値引き前に50万円の車両粗利益が見込まれている車から30万円を値引きすれば、単純計算では残る車両粗利益は20万円程度です。
さらに、カーナビやドライブレコーダーを無料で付けたり、下取り価格を上乗せしたりすれば、粗利益はさらに減ります。
営業スタッフが値引きだけで契約を取ろうとすると、販売台数は増えても、会社に利益が残らない場合があります。
車種や販売条件でも利益は変わる
車1台の粗利益は、販売時期や在庫状況によっても変わります。
決算期やモデル末期では、在庫を減らすために値引きが大きくなることがあります。その分だけ、1台あたりの車両粗利益は少なくなります。
一方、販売会社がメーカーから設定された販売台数の目標を達成すると、販売奨励金が支給される場合があります。
商談単体では利益が少なく見えても、月間や年間の販売実績によって、販売会社全体では利益を確保できることがあります。
新車と中古車では利益の出方が違う
新車と中古車では、利益が決まる仕組みが異なります。
新車は、メーカーや販売会社の仕入れ条件、車種、値引き額などによって車両粗利益が変わります。
中古車は、仕入れ価格と販売価格の差が粗利益の基本になるため、下取り査定や商品化費用、在庫期間が重要です。
新車はメーカー・車種・販売会社で粗利益が変わる
私が自動車営業として働いた経験では、新車の値引き前の車両粗利益は、次の金額がひとつの目安でした。
| 車種の目安 | 値引き前の車両粗利益の目安 |
|---|---|
| 軽自動車・コンパクトカー | 20万〜30万円程度 |
| ミドルクラスのミニバン | 40万〜60万円程度 |
| 高級セダン・高級ミニバン | 100万円前後になる場合もある |
ただし、これは業界全体で共通する固定相場ではありません。
同じ価格帯の車でも、メーカー、車種、販売会社の仕入れ条件によって粗利益の幅は変わります。
また、表の金額は、私が営業現場で見ていた値引き前の車両粗利益の目安です。
商談で車両値引き、用品サービス、下取り価格の上乗せを行えば、販売会社に残る車両粗利益は減ります。
私が扱った車種では、ハイブリッド車やBEVは、車両価格が高くても、同じ車格のガソリン車より販売会社に残る車両粗利益が少ないケースがありました。
ただし、メーカー、車種、販売時期によって条件は異なります。
新車の仕入れ条件や販売奨励金は、販売会社の規模や年間販売台数によって変わる場合もあります。
私が経験した範囲では、年間販売台数が多い販売会社ほど、メーカーとの取引条件や販売奨励金の面で有利になるケースがありました。
つまり、同じメーカーの同じ車種を販売しても、販売会社によって粗利益が異なることがあります。
中古車は仕入れ価格と販売価格の差で粗利益が決まる
中古車の販売価格は、年式、走行距離、車両状態、人気、オークション相場などによって、ある程度の相場が決まっています。
そのため、中古車は販売価格を大きく上げるよりも、いくらで仕入れられたかが粗利益を左右します。
私の経験では、中古車1台あたりに見込む粗利益は、20万〜30万円程度がひとつの目安でした。
高額な上級車や人気車では、50万〜70万円程度の粗利益を見込むケースもありました。
ただし、仕入れ価格、商品化費用、在庫期間によって、実際に残る利益は変わります。
下取り査定と在庫期間が中古車の利益を左右する
販売相場が200万円の中古車を150万円で下取りできれば、販売会社は粗利益を確保しやすくなります。
ただし、販売価格と下取り価格の差額50万円が、そのまま販売会社の利益になるわけではありません。
中古車として再販売するためには、次のような費用がかかります。
- 点検・整備費用
- 傷やへこみの修理費用
- 車内クリーニング費用
- 保証費用
- 広告・展示費用
- 商品化にかかる人件費
競合店との査定競争で下取り価格を高くしすぎると、再販売してもほとんど利益が残らない場合があります。
また、中古車は仕入れた時点の相場で必ず売れるとは限りません。
在庫期間が長くなると年式が古くなり、市場相場が下がる可能性があります。
売れ残った車は値下げが必要になるため、当初見込んでいた粗利益を確保できないことがあります。
営業は1台売るといくら歩合が付く?
この記事では、一般に「歩合」や「インセンティブ」と呼ばれるものを、販売奨励給として説明します。
営業が車を1台売ったときにもらえる金額は、販売会社の制度によって異なります。
1台ごとの固定額、粗利益連動、台数達成型などがあり、「1台売れば必ず○万円」とは言えません。
私が経験した販売会社では、粗利益に一定の割合を掛ける考え方があり、納車台数、目標達成状況、役職などによって支給率が変わりました。
ただし、販売奨励給の計算方法や支給率は、販売会社ごとに異なります。
1台ごとに固定額が付く制度
販売会社によっては、車を1台納車するごとに、決められた固定額が支給される制度があります。
例えば、車種や納車台数に応じて、あらかじめ決められた金額を支給する仕組みです。
支給額や対象車種は、販売会社によって異なります。
固定額制度は計算が分かりやすい一方、大きな粗利益を残しても支給額が増えない場合があります。
粗利益に連動する制度
粗利益連動型では、1台の契約で販売会社に残した粗利益に応じて、販売奨励給が決まります。
値引きが少なく、保険、コーティング、ローンなどの付帯商品も販売できた契約は、評価が高くなりやすいです。
反対に、大幅な値引きで契約を取った場合、販売実績にはなっても、販売奨励給が少なくなることがあります。
納車台数や役職によって支給率が変わる制度
私が経験した販売会社では、月間の納車台数が増えるほど販売奨励給の割合が上がり、納車台数が少ない月は割合が下がる仕組みでした。
例えば、月3台納車した営業と月10台納車した営業では、同じ粗利益の車を販売しても、1台あたりの奨励給が異なる場合があります。
また、販売奨励給は、納車台数や粗利益だけでなく、営業スタッフの役職によって区分されることがあります。
私が働いていた販売会社では、役職のない営業スタッフと主任営業では、同じ納車台数、同じ粗利益でも、主任営業の方が販売奨励給の支給額が多くなる仕組みでした。
さらに、一定台数を超えると、それまでに納車した車までさかのぼって支給額が増える制度もありました。
月間・四半期の目標達成で報奨金が付く制度
販売会社によっては、1台ごとの奨励給とは別に、月間や四半期の目標達成に対する報奨金があります。
評価対象になる項目は、次のようなものです。
- 新車の納車台数
- 中古車の納車台数
- 自動車保険の契約件数
- ローンやクレジットの利用率
- コーティングの販売件数
- メンテナンスパックの加入件数
- 店舗全体の目標達成率
納車台数だけでなく、付帯商品の実績や店舗全体の成績まで含めて評価されることがあります。
歩合がない会社もある
すべての販売会社に、1台ごとの歩合制度があるわけではありません。
個人の納車台数よりも、店舗全体の実績を重視する会社もあります。
また、基本給を高く設定する代わりに、個人歩合を少なくしている会社もあります。
求人票に「インセンティブあり」と書かれていても、支給条件が厳しく、実際にはほとんど受け取れない場合があります。
車両以外にも利益が出る
ディーラーの利益は、車両本体だけではありません。
車両本体の粗利益が少ない契約でも、保険、ローン、コーティング、用品、整備などを組み合わせることで、契約全体の利益を確保できます。
自動車保険
ディーラーが任意保険を扱っている場合、保険契約による代理店手数料が収益になります。
保険の新規契約件数や継続率が、営業スタッフの評価対象になる会社もあります。
ローン・クレジット
ディーラーローンや残価設定型クレジットを利用すると、販売会社に手数料などの収益が発生する場合があります。
販売会社によっては、ローン利用率も営業スタッフの評価項目に含まれます。
コーティング
ボディコーティングは、車両本体以外の利益を確保する商品として提案されることがあります。
車両値引きが大きい商談でも、コーティングを付けてもらうことで、契約全体の粗利益を補える場合があります。
ドライブレコーダーなどの用品
カーナビ、ETC、ドライブレコーダー、フロアマットなどの用品にも利益があります。
用品代だけでなく、取り付け工賃も販売会社の収益になります。
メンテナンスパック
メンテナンスパックは、点検やオイル交換などをセットにした商品です。
販売時に加入してもらうことで、購入後の点検入庫や車検、将来の買い替えにつながりやすくなります。
車検・点検・整備
新車販売時の利益が少なくても、販売後の点検、車検、修理などから長期的な利益を得られる場合があります。
ディーラーにとっては、車を販売した後も継続して入庫してもらうことが重要です。
下取り・中古車再販
下取り車を適正価格で仕入れて再販売できれば、新車販売とは別に中古車販売の利益も得られます。
一方、下取り価格を上げすぎると、再販売時の粗利益は減ります。
たくさん売っても給料が増えない場合がある
多くの契約を取っても、値引きが大きく粗利益が少なかったり、納車が翌月になったりすれば、その月の給料が期待ほど増えない場合があります。
販売奨励給は契約した時点ではなく、基本的に納車した時点で販売実績としてカウントされるためです。
値引きしすぎると粗利益が減る
販売台数を増やすために大幅な値引きを続けると、会社に残る粗利益が減ります。
粗利益連動型の制度では、納車台数が多くても、1台ごとの粗利益が少なければ奨励給は増えにくくなります。
私が営業をしていたときも、単純に販売台数を増やせば高く評価されるわけではありませんでした。
私が働いていた販売会社では、値引きが大きい契約よりも、保険、ローン、コーティング、メンテナンスパックまで含めて契約できた商談の方が評価されやすい傾向がありました。
付帯商品の実績も評価される
販売会社によっては、車両の納車台数だけでなく、次の実績も評価されます。
- 自動車保険
- ローン
- コーティング
- メンテナンスパック
- JAFなどの関連サービス
- 点検予約
- 下取り車の粗利益
車を納車できても、付帯商品の実績が少なければ、評価が上がらない場合があります。
店舗や会社全体の目標も影響する
個人の納車目標を達成していても、店舗全体の目標が未達の場合、報奨金が出ない会社もあります。
反対に、自分の納車台数が少なくても、店舗全体が目標を達成したことで報奨金が支給される場合があります。
個人評価と店舗評価の割合は、販売会社ごとに異なります。
納車台数と付帯商品の実績を伸ばせる営業は高収入を狙える
ディーラー営業が高収入を狙えるのは、納車台数だけでなく、粗利益や付帯商品の実績も販売奨励給に反映されるためです。
多くの車を納車しながら、値引きを抑えて粗利益を残し、自動車保険、ローン、コーティング、メンテナンスパックなども契約できる営業は、販売奨励給が増えやすくなります。
さらに、納車台数が一定数を超えると支給率が上がる制度や、主任営業などの役職によって奨励給が増える制度もあります。
つまり、単純に契約を多く取るだけではなく、粗利益を確保し、付帯商品まで提案したうえで納車まで完了させることが、ディーラー営業で高収入を狙う条件です。
求人を見るときに確認する歩合制度
ディーラー営業への転職を考えている場合は、基本給だけでなく、歩合制度の中身まで確認してください。
「インセンティブあり」という言葉だけで判断すると、入社後に想像していた収入と違う可能性があります。
基本給はいくらか
歩合の割合が高くても、基本給が低ければ、納車が少ない月の収入は不安定になります。
特に未経験で入社する場合、最初から多くの車を契約し、納車まで進めるのは簡単ではありません。
研修期間や試用期間中の給与、教育制度まで確認してください。
1台あたりの歩合と計算方法を確認する
車を1台納車するごとに固定額が付くのか、車両粗利益に応じて支給額が変わるのかを確認してください。
粗利益連動型の場合は、車両本体だけで計算するのか、保険、ローン、コーティングなどの実績も評価に含まれるのかが重要です。
求人票に「インセンティブあり」と書かれているだけでは、実際の支給額や条件までは分かりません。面接時に計算方法まで確認してください。
台数によって支給率が変わるか
月間の納車台数が増えるほど、歩合率が上がる会社があります。
確認するべきポイントは次のとおりです。
- 何台から支給率が上がるのか
- 過去の納車分までさかのぼって増えるのか
- 新車と中古車で台数の数え方が違うか
役職によって支給率が変わるか
販売奨励給は、納車台数や粗利益だけでなく、役職によって支給率が変わる場合があります。
例えば、役職のない営業スタッフと主任営業では、同じ納車台数、同じ粗利益でも、主任営業の方が多く支給される制度があります。
求人票だけでは役職別の支給率まで分からないことが多いため、面接では次の点を確認してください。
- 一般営業と主任営業で支給率が違うか
- 主任へ昇格する条件は何か
- 昇格後に基本給と奨励給がどう変わるか
- 役職手当と販売奨励給は別に支給されるか
- 管理業務が増えても個人目標は変わらないか
役職が上がれば、必ず負担に見合った収入になるとは限りません。
支給率だけでなく、後輩指導や店舗管理などの仕事内容も確認する必要があります。
保険やローンも評価されるか
車両販売だけでなく、保険、ローン、コーティング、メンテナンスパックなどが評価対象になるか確認してください。
車両以外の評価項目が多い会社では、納車台数だけで収入を判断できません。
インセンティブに上限があるか
納車台数が増えても、インセンティブに上限が設定されている会社があります。
たくさん納車しても一定額以上増えない制度では、成果を出したときの収入が伸びにくくなります。
キャンセル時や納車時の扱いを確認する
販売奨励給は、契約した時点ではなく、基本的に車を納車した時点で販売実績としてカウントされます。
そのため、月末に契約できても、登録や納車が翌月になれば、販売奨励給も翌月分として計算される場合があります。
契約後にキャンセルが発生した場合は、販売実績として認められず、支給予定だった奨励給も取り消されます。
販売会社によっては、登録完了時点でカウントする場合もあるため、次の点を確認してください。
- 契約・登録・納車のどの時点で実績になるか
- 月をまたいだ場合は何月分になるか
- 納期遅延の場合も翌月扱いになるか
- キャンセル時に奨励給がどう扱われるか
私が経験した販売会社では、基本的に納車した時点で販売台数としてカウントされていました。
▶ ディーラー営業の基本給・賞与・歩合を含む給料の仕組みを見る
まとめ
車1台の粗利益は、メーカー、車種、値引き額、仕入れ条件、販売会社の規模によって変わります。
私の営業経験では、値引き前の車両粗利益は、軽自動車・コンパクトカーで20万〜30万円程度、ミドルクラスのミニバンで40万〜60万円程度、高級車では100万円前後になるケースがありました。
中古車では、20万〜30万円程度を見込むケースがひとつの目安でした。
ただし、新車は値引きや販売条件、中古車は仕入れ価格、商品化費用、在庫期間によって、実際に残る利益が変わります。
営業の販売奨励給は、固定額、粗利益連動、納車台数、付帯商品の実績、役職などによって異なります。基本的に納車時点でカウントされるため、契約件数が多くても、納車が翌月になれば当月の奨励給に反映されない場合があります。
多くの車を納車しながら粗利益を残し、保険やローンなども契約できる営業ほど、高収入を狙いやすくなります。
給料や歩合だけで転職を決めず、ノルマ、休日対応、人間関係なども確認してください。
よくある質問
新車を1台売るとディーラーはいくら儲かりますか?
私の経験では、値引き前の車両粗利益は、軽自動車やコンパクトカーで20万〜30万円程度、ミドルクラスのミニバンで40万〜60万円程度、高級セダンや高級ミニバンでは100万円前後になる場合がありました。
ただし、メーカー、車種、値引き額、販売会社の仕入れ条件によって異なります。
中古車を1台売るといくら儲かりますか?
中古車1台あたりに見込む粗利益は、20万〜30万円程度がひとつの目安です。
高額車では50万〜70万円程度になる場合もありますが、仕入れ価格、商品化費用、在庫期間によって変わります。
営業は車を1台売るといくらもらえますか?
販売会社によって異なります。
1台ごとの固定額、粗利益連動、納車台数に応じた支給率、役職による区分などがあり、「1台売れば必ず○万円」という共通の相場はありません。
販売奨励給は契約した月にもらえますか?
基本的には、契約した時点ではなく、納車した時点で販売実績としてカウントされます。
月末に契約しても、納車が翌月になれば、奨励給も翌月分として計算される場合があります。
同じ台数を納車しても営業によって奨励給は違いますか?
違う場合があります。
同じ納車台数、同じ粗利益でも、付帯商品の実績、目標達成状況、役職によって販売奨励給が変わることがあります。
私が働いていた販売会社では、役職のない営業スタッフより主任営業の方が、同じ実績でも多く支給される仕組みでした。
ディーラーは車両以外でも利益を得ていますか?
はい。
自動車保険、ローン、コーティング、用品、メンテナンスパック、車検、点検、整備、下取り車の再販などからも利益を得ています。
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