
「一生懸命説明しているのに、商談が進まない」
そんなときほど、自分が話しすぎていないかを振り返ってみてください。売りたい気持ちが強くなると、車の良さを伝えることに集中し、お客様が何を求めているのかを聞く時間が減ってしまいます。
自動車営業で大切なのは、お客様を説得することより、お客様が納得して選べるようにすることです。希望車種を聞くだけでなく、選んだ理由や普段の使い方を確かめ、その方に合う選択肢を一緒に考えます。
私は整備士から自動車営業に移り、中古車を中心に新車も販売してきました。営業で全国10位以内に入った経験はありますが、商談に奇策があるとは思っていません。
この記事では、商談とその後の対応で見直したい10の習慣を、現場での経験を交えて紹介します。まずは、自分が抜かしやすいものを一つ見つけてください。
- 成績上位者の習慣は「選ぶ理由」を一緒に確かめること
- 1.売れないときほど、自分の話す量を振り返る
- 2.希望車種を聞いたら、選んだ理由も聞く
- 3.「どのように使いますか?」から話を広げる
- 4.聞いた使い方と、車のメリットを結びつける
- 5.別の車が合いそうでも、希望車種を否定しない
- 6.説明したメリットを、実車で確かめてもらう
- 7.使い方に合わないかもしれない点も確認する
- 8.質問や要望には、できるだけ早く対応する
- 9.商談の終わりに、次に確認することを共有する
- 10.商談が進まなかった理由を、決めつけずに振り返る
- 最初に取り入れるなら「説明前に一問聞く」
- 行動を見直してもつらいときは、働く環境も確認する
- まとめ|説得する前に、お客様の話を聞く
成績上位者の習慣は「選ぶ理由」を一緒に確かめること
マーケティングの専門家ジェリー・オブライエン氏は、顧客にとっての価値と「それを選ぶ理由」を結びつける考え方を示しています。自動車営業に置き換えるなら、「この車は人気です」で終わらせず、「伺った使い方なら、この点が役立ちそうです」と理由を具体的に伝えることです。これは同氏の考え方を商談に応用したものです。
ただし、その理由を営業が一方的に決めることはできません。まずお客様の話を聞き、実際の車を見ながら確かめる必要があります。
1.売れないときほど、自分の話す量を振り返る
商談が進まないと、「まだ車の魅力が伝わっていない」と考えて説明を増やしたくなります。
私も、売りたい気持ちが強くなるほど、自分が一生懸命話してしまう点には注意しています。「お客様の話を聞くのは当たり前」と思っていても、売れていないときに限って、その基本が崩れることがあるんです。
商談後には、説明した内容だけでなく、次の三つを振り返ります。
- 希望車種を選んだ理由を聞けたか
- 普段の使い方を聞けたか
- 迷っていることを、お客様自身の言葉で聞けたか
答えられない項目があれば、次の商談では説明を始める前に、その質問をしてみてください。
話すことが得意でなくても営業を続けられるか不安な方は、次の記事も参考になります。
▶ ディーラー営業は話し下手でも成功できる?口下手が売れる秘訣
2.希望車種を聞いたら、選んだ理由も聞く
「○○という車が欲しい」と来店されても、その車をよく知っているとは限りません。
以前、希望された車へご案内したところ、お客様から「これが○○なんですね」と言われたことがあります。話を聞くと、周りの人が乗っていて「良い車だ」と聞き、興味を持ったそうです。実車を見ていただきましたが、商談は進みませんでした。
車名が決まっていることと、その車が自分に合うと判断できていることは別です。すぐに装備や性能を説明する前に、こう聞いてみます。
「その車の、どんなところが良いと聞きましたか?」
期待していた点が分かれば、実車で何を確認してもらうべきかも見えてきます。
3.「どのように使いますか?」から話を広げる
私が商談で聞くのは、難しい質問ではありません。
- 「どのように使いますか?」
- 「距離は乗りますか?」
- 「誰が運転しますか?」
- 「普段乗るのは何人ですか?」
同じ車を希望していても、一人で通勤に使う方と、家族で出かける方では、気になる点が違います。運転する人が複数いれば、それぞれが使いやすいかも確認したくなるでしょう。
質問を一度に並べる必要はありません。お客様の答えを聞き、もう少し知りたいところを会話の中で確かめます。
4.聞いた使い方と、車のメリットを結びつける
使い方を聞いたら、その答えを提案に生かします。
たとえば普段乗る人数を聞いたなら、実際に乗る場面を想像しながら室内を見てもらう。運転する方が複数いるなら、それぞれに運転席へ座ってもらう。説明したメリットが本当にその方にとって役立つかを確かめます。
「人気がある」「装備が多い」というだけでは、そのお客様が選ぶ理由になりません。
「伺った使い方なら、この点が役立つと思います。実際に確認してみませんか?」
お客様の話と車の特徴がつながっているかを、一つずつ確かめることが大切です。
5.別の車が合いそうでも、希望車種を否定しない
話を聞くうちに、希望された車以外にも合いそうな選択肢が見つかることがあります。
そのとき、希望車種を否定して別の車を強く勧める必要はありません。私は会話の中で、次のように伝えます。
「その使い方なら、こういう車もありますよ。こちらには、こんなメリットがあります」
お客様の話に合わせ、選択肢とメリットを少しずつ伝える。そのうえで、最初に希望された車も含めて比べてもらいます。選ぶのはお客様です。
6.説明したメリットを、実車で確かめてもらう
「運転しやすい」「家族で使いやすい」は、営業側の説明だけでは判断しにくい言葉です。
運転席に座る、後席に乗る、乗り降りする。できる範囲で実際の使い方に近い形で確認してもらいます。
お客様の反応が薄ければ、説明を重ねる前に聞いてみます。
「想像していた車と、違うところはありますか?」
最初に希望された車でも、実際に見ると印象が変わることがあります。その反応も、次の提案を考えるための大切な情報です。
7.使い方に合わないかもしれない点も確認する
車を気に入ってもらいたい気持ちはあります。それでも、伺った使い方との間に気になる点があれば、確認せずに商談を進めないようにします。
私には、用途の聞き取りが足りず、購入後早い段階で乗り換えの相談を受けた経験があります。購入時に気に入った車でも、日々の使い方に合わなければ、後から困ることがあるんです。
良い点を伝えるときほど、**「実際に使って困らないか」**も一緒に確かめます。お客様が納得するためには、気になる点を残したままにしないことが大切です。
8.質問や要望には、できるだけ早く対応する
お客様から連絡があったときは、質問や要望にできるだけ早く対応します。これも営業の基本です。
すぐに答えられない内容なら、推測で返事をせず、確認が必要だと伝えます。
「確認してからお返事します。分かり次第ご連絡します」
時間がかかりそうなら、いつ頃返答できるかも伝えます。決まった時間内に返すことを目的にするより、待たせたままにせず、正確な内容を返すことを大切にします。
9.商談の終わりに、次に確認することを共有する
見積もりを渡して「ご検討ください」で終えると、お客様が何を迷っていて、営業側が次に何をすべきかが曖昧になることがあります。
商談の最後に、まだ気になることを聞いてみます。そのうえで、確認する内容と連絡する時期を、お客様と共有します。
「維持費が気になるとのことでしたので、条件をそろえて確認します。ほかにも比べたい点があれば教えてください」
フォローは回数を重ねるためではありません。お客様が判断するために必要な情報を届けることが目的です。
10.商談が進まなかった理由を、決めつけずに振り返る
商談が進まなかったとき、「価格が高かったから」「購入意欲がなかったから」と、すぐに理由を決めつけないようにします。
次の点を振り返ると、自分が次回変えられる行動が見えてきます。
| 振り返ること | 次の商談で試すこと |
|---|---|
| 希望車種を選んだ理由を聞けなかった | 車の説明前に、興味を持ったきっかけを聞く |
| 使い方が曖昧なままだった | 運転する人や普段乗る人数を確認する |
| 車への反応が薄かった | 想像と違った点がないか聞く |
| 質問への回答が残った | 確認する内容と返答予定を伝える |
| 次の連絡が曖昧だった | お客様の都合を聞いて、連絡内容と時期を決める |
一度にすべてを変えようとしなくて大丈夫です。次の商談で変える行動を一つ決めることから始めます。
商談が進まない理由をさらに整理したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
最初に取り入れるなら「説明前に一問聞く」
10項目の中で、まず試したいのはこれです。
「その車を気に入ったのは、どんなところですか?」
答えを聞いてから、どのように使うのかを確かめます。そして、伺った使い方に合うメリットを伝え、実車でも確認してもらいます。
売り込みの言葉を増やす前に、お客様が**「なぜ自分はこの車を選ぶのか」**を考えられるようにする。そこから商談を見直してみてください。
行動を見直してもつらいときは、働く環境も確認する
商談の進め方は、自分で見直せます。一方で、目標の設定や休日など、本人の工夫だけでは変えにくい条件もあります。
ノルマが負担になっている方は、目標や未達時の実態を整理してみてください。
▶ ディーラー営業のノルマはきつい?月何台売るのか・未達時の現実
今の働き方を続けるか迷っている方は、転職を決める前に、何がつらいのかを分けて考えると判断しやすくなります。
▶ 自動車ディーラー営業がつらい・辞めたい人の転職判断ガイド
整備士から営業へ移った方なら、営業の成績だけで今後の仕事を決める必要はありません。整備士としての経験を生かせる選択肢も含めて比較できます。
▶ 整備士を辞めたい人向け転職エージェント3選|まだ転職を決めていなくても使える相談先
まとめ|説得する前に、お客様の話を聞く
自動車営業の商談に、必ず売れる台本はありません。売れないときほど説明を増やしたくなりますが、まずはお客様の話を聞けているか振り返ってみてください。
希望車種を選んだ理由を聞く。普段の使い方を確かめる。その答えに合う選択肢とメリットを伝え、実車で確認してもらう。
お客様を説得するのではなく、お客様が納得して選べるようにする。 次の商談では、説明を始める前の一問から試してみてください。


