
営業活動では、「契約ミス」「納期遅延」「伝達不足」が最も多いトラブルです。
これらはすべて“事前の仕組み化”と“初期対応の質”でほぼ防げます。
本記事では、ISO 10002(苦情対応マネジメントシステム)の考え方を基に、
ミスを防ぐ方法・トラブル発生時の初動・再発防止方法をまとめました。
営業初心者でも使えるテンプレ付きで、“迷わない営業”を実現できます。
営業トラブルの主要3パターンと防止策
① 契約ミス(記載漏れ・誤記・条件認識のズレ)
契約ミスは、商品仕様・価格・オプション・キャンセル規定などの
「記載漏れ」や「口頭だけの説明」で起こります。
ISO 10002では、苦情とは「製品・サービスに対する不満の表明」と定義され、
計画 → 運用 → 是正 → 改善(PDCA)で管理することが求められます。
つまり、ミスの“事前防止”と“再発防止”の両方が必要です。
よくある例:
見積書の「総額に含む/含まない」項目(送料・初期設定費など)を口頭説明のみで済ませ、
契約後に「聞いていない」とクレーム化。
→ 書面と確認サインで100%防げる典型例です。
② 納期遅延(社内の見える化不足)
納期遅延は、
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分業間の情報ギャップ
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進行状況の“見える化”不足
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顧客への中間報告がゼロ
これらが原因で「気付いたら納期直前」という状況を生みます。
報・連・相が機能していない組織では特に起こりやすく、
一度遅れると被害が大きくなる典型的なトラブルです。
③ 伝達不足(言った/言わない問題)
伝達ミスは、口頭説明のみ・メモなし・CC漏れが原因で発生します。
特に自動車やリフォームなど、表示・説明の正確性が求められる業界では
**公正表示(誤認防止)**が重要です。
曖昧な表現(「目安」「相当」など)は誤解の温床になるため、
定義や条件を明確にして伝える必要があります。
トラブル発生時の初期対応(最初の一報がすべて)
ISO 10002では、初期対応に求められる要素として
「迅速性・公平性・透明性」が明記されています。
初動の質で、その後の8割が決まります。
【初動の型】
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事実確認(主観を入れない)
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お詫び(感情への共感)
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安全確保・暫定対応の案内
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次の連絡時刻の確約
責任追及よりも「被害の最小化」を最優先します。
記録は同時進行
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誰が・いつ・何を言ったか(顧客発言含む)
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電話/メール/対面ごとに記録
これは、後の再発防止やADR(裁判外紛争解決)でも重要な証拠になります。
※国民生活センターでも記録の重要性が明示されています。
謝罪と代替案提示の正しい流れ
【三段ロジックで伝える】
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ご不便へのお詫び(感情)
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事実と原因の仮説(主観なし)
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代替案+期限の提示(選択肢A/B)
代替案は「スピード/品質/コスト」のどれを優先するか、
顧客と合意して文書化します。
ISO 10002では、
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是正(Corrective)=今回の救済
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予防(Preventive)=次回の再発防止
を明確に分けることが必要とされています。
営業トラブルを防ぐチェックリスト(常備推奨)
契約・納品・進行の抜け漏れをゼロにする最短ルートです。
【契約書・見積書の確認項目】
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顧客情報(氏名/住所/連絡先)
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商品仕様・数量・単価・合計額(税・手数料含む)
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提供範囲(含む・含まない・オプション)
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納期・納品方法・設置や初期設定の要否
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廃棄/運搬/取付の付帯費用
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保証・アフターサポート窓口
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キャンセル条件・違約金
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口頭説明済みチェック(顧客サイン)
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社内承認・関係部署への共有(CC一括送信)
中古商材・キャンペーン表記は、公正競争規約の趣旨(誤認防止)に沿う必要があります。
報連相を“イベント基準”で仕組み化する
報連相は頻度ではなく「イベント基準」で固定することで、
トラブルを大幅に減らせます。
【報告タイミング例】
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見積提出
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発注確定
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納期変更発生
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検収完了
件名テンプレ
【案件名/顧客名】進捗・課題・必要アクション(担当者・期限)
属人化を排除し、DXによる見える化が推奨されます。
※経済産業省でも業務の見える化・標準化の重要性が紹介されています。
整備部(サービス部門)との連携ポイント
自動車業界では特に重要ですが、製造・カスタマーサクセスにも応用可能です。
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“作業券”で依頼範囲・優先度・期日を双方確認
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納期テーブル(部品在庫・外注工程)を週次で共有
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中間報告日を先に決める
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遅延の見込みが出た段階で、代替案とセットで顧客へ連絡
上司への報告と再発防止ミーティング
ISO 10002のPDCAに沿い、15分で回せる仕組みが有効です。
【テンプレ構成】
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発生事象(日時・顧客・被害)
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原因(直接要因/背景要因)
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是正措置(今回の救済)
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予防策(チェックリスト更新・教育反映)
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効果検証(次回ミーティングでレビュー)
平時から記録・合意文書を整備しておくと、紛争時のADRが円滑になります。
トラブル“初動24時間”テンプレ
T+0〜2時間
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一報(お詫び・安全確保)
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事実確認
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再連絡時刻の確約
T+2〜6時間
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原因仮説の提示
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暫定対応
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代替案A/Bの案内
T+24時間以内
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正式な是正案
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新しい納期・担当部署・連絡窓口を文書で合意
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社内へエスカレーション
ISO 10002の「迅速・透明・公正」の原則に準拠しています。
まとめ(行動のお願い/CTA)
営業トラブルは、
① 事前のチェックリスト
② 進行の見える化
③ 初動24時間の型
この3つで確実に減らせます。
Q&A
Q1:営業で最も多いトラブルは?
契約ミス・納期遅延・伝達不足の3つが中心です。
事前チェックと記録の仕組み化で大幅に減らせます。
Q2:納期遅延を防ぐ一番の方法は?
社内工程の“見える化”と、顧客への中間報告の固定化です。
Q3:クレーム初動で最重要な点は?
責任よりも「被害の最小化」と「次の連絡時間の確約」です。
Q4:チェックリスト運用の効果は?
ヒューマンエラーの多くを構造的に防ぎ、再発防止にも使えます。
Q5:記録はどこまで必要?
発生から解決までの事実関係はすべて記録。
ADRでも重要な証拠になります。


